2日 通夜
18時より、通夜。
少し、手伝いもした。
手伝いを申し出る。
祖父に供えるために、おにぎりを作って欲しいと言われた。
宗教か地方か、どちらに根付いているものかわからないが、そういう作法らしい。
3合の米を炊き、1合分を茶碗にこんもりと盛る。
残りの2合で4つのおにぎりを作る。
ボールのような真ん丸いおにぎりだ。
塩などは特につけない。
これをお盆の四隅に置く。
おそらく18時ごろ。
玄関そばの和室へ通された。
中には布団がしいてあり、人が寝ている。
顔には白い布がかぶせてあった。
頭の両脇に台の様なものがあり、それを渡すように布がかけられているので、顔の形がくっきり出ることはない。
枕元には先ほど持ったご飯やおにぎりなど、こまごまとしたものが置いてあった。
さらに壁側に、さきほどと同じ写真が飾ってある。
部屋の入り口に近いほうから父、弟、私と並んで座る。
上座から私、弟、父だ。
祖母、母の兄、母も部屋に入り、枕元に座る。
母が白い布を左右から順にまくり、中央であわせて取った。
顔があらわになる。
写真よりずっと年をとった顔だった。
母と入れ替わりに祖母が祖父の元へよった。
枕元に、水を張った皿と、その水に葉が一枚つけてある。
祖母は葉を手に取ると、それで祖父の唇をなぞった。
「まつのお水」というらしい。(聞き直したら「末期の水」だそうだ)
祖母が葉を置いて戻ると、母と母の兄に「3回やるんだよ」と耳打ちされた。
葉を取り、唇をそこについた水で湿らせ、葉を水につけなおすまでを1回と数え、全部で3回行う。
祖母に続き、母の兄、母、そして私の番となった。
母に「わかる?」と耳打ちされた。
私は見たことを元に手順を確認し、祖父の元へよった。
祖父は目を閉じているが、口は少し開いている。
鼻に綿がつめてあった。
水につけてあった葉を取り、無意識に水がたれないよう左手を添え、祖父の唇へ運んだ。
固い。
弟も危なっかしい手つきで終え、最後が父。
ずいぶんと堂々としていた。
人生経験が長いとこうなるのか。
遺体を目の前にかなり動揺した私とは大違いだ。
儀式めいたものはこれだけだった。