2日 母の実家へ
朝、一通り家事をこなし、昼前に家を出、昼過ぎに飛行機に乗り、夜は実家にて通夜。
数日家を空けることになるため、食品を使いきるよう心がける。
朝食は、食パンを使い切り、バナナを食べつくす。
食器を片付け、洗濯をし、洗濯物は室内に干す。
ゴミをできる限り出し、家を出る。
空港で、父に「何か手土産を買え」と言われた。
数を尋ねると、
母・母の兄・祖母・父・私・弟の6人に、+1以上のものを選べといわれた。
手土産といえばお貸しだろう。
お菓子を探してみるが、何を選んでいいかわからない。
母の実家へ持っていくものだ。安っぽいものは選べない。
食べないと失礼になる以上、私や弟が苦手とするあんこが入っているものは選べない。
草加煎餅はいいように見えたが、祖母の歯の状態がわからない。
父と弟が手荷物を預ける間悩んだ挙句、「ひよこポテト8個入り」なるものを選んだ。
8個で1050円なので、並ぶお土産類の中では普通かやや安っぽいように感じる。
でも仕方がない。
荷物検査が終わった後、中の売店で、「帝国ホテルのお菓子」というものを見つけた。
高級感は私の理想どおりだったが、いかんせん時間がなかった。
ホテルのチェックインまでは滞りなく進む。
ホテルのフロント係に勘違いさえ、連泊なのに1泊分しか料金を請求されなかったぐらいだ。
母の実家へは、電車かバスで向かう。
電車は1時間に1本しかない。
ちょうどいい時間に電車がないので、バスで行くことにした。
携帯で徳島のバスについて調べる。
理想の停留所に止まるバスはなく、近くの停留所に止まるバスで譲歩した。
出発地と目的地から調べられる時刻表検索システムは便利だ。
紙の時刻表の情報だけで、父の言うとおりにしていたらたどり着かなかったかもしれない。
とはいえ、地図は父が持っているものが頼りだった。
バスを降りると、方向を見失った。
原因は地図上で銀行の位置が異なっていたからだ。移転したらしい。
他の目印から方向をつかみ、父を先頭に実家へ向かう。
途中、細い、道と思えないような道を見過ごしたが、無事にたどり着いた。
家の前に、大きなちょうちんが置かれ、「18時~通夜」と書かれた看板があった気がする。
父はチャイムも何も押さずに扉を開けて中へ入った。
母に出迎えられる。
部屋に通される。
私は母に手土産を渡した。
母の兄に薦められ、座布団に腰掛ける。
部屋には、おそらく祖父と思われる写真が飾ってあった。
「おそらく」としか言えないのが悲しい。
他に部屋では、阪神タイガースのキャラクターの大きなぬいぐるみが存在感を持っていたが、私が興味を持ったのは飾り棚の中の人形だった。
ガラス戸のはまった棚には、人形というか置物というかが、棚のほとんど、ひょっとすると全部に飾られていた。
十二支をかたどった陶器の飾り物は、きちんと12種類あったに違いない。
ペットボトルのおまけについていたであろう、生茶パンダもいた。
母は季節に合わせて玄関を猫の人形で飾り、毎年正月前には次の十二支の置物を買う。
母の趣味が、祖母から引き継がれたものであろうことを知った。
やがて、祖母が来た。
小さい人だった。
最後に会ったのは20年ほど前だろうか。
物心つく前で、顔は覚えていない。
弟は会うのが初めてだ。
通夜の準備に家の中はばたばたしている。
私は手伝いを申し出た。